物理のたね

身近な「なぜ?」や授業の「分からない」をきっかけに、親子で物理を楽しみ、好奇心を育てるヒントを届けます。

ガリレオの落下実験に、空気抵抗はないの?|すぐに答えられなかった疑問

 

重い球と軽い球は、同時に落ちる。
でも、空気抵抗はないのでしょうか。
紙を落とす実験では、落ち方が違ったはずです。

 

こんにちは、黒豆柴です🍀

 

偉人伝などに出てくる、ガリレオの落下実験

ピサの斜塔から重さの違う二つの球を落とすと、同時に地面に着いた。
そんな話を読んだことはありませんか。

ボクは、この話で引っかかりました。

「空気抵抗は、どうなっているの?」

大学で物理を学んだボクですが、すぐにはうまく説明できませんでした。

今回は、この疑問をあらためて考えてみます。

 

紙は落ち方が違ったのに、球は同時?

前の記事では、広げた紙と丸めた紙を落としました。

同じ大きさの紙でも、丸めたほうが先に落ちます。
広げた紙は空気の影響を大きく受けて、ゆっくり落ちていきました。

 

▼ 紙の実験はこちら

physics-seed.hatenablog.com

 

それなら、球にも空気抵抗があるはずです。

「紙の実験では空気抵抗を考えたのに、ガリレオの話では考えなくていいの?」

そう思うと、「重さが違っても同時に落ちる」という説明だけでは、納得できなくなりました。

 

球にも、空気抵抗はあります

まず、地上で落とす球にも空気抵抗はあります。

球だから、空気抵抗がなくなるわけではありません。

ただし、落ち方にどのくらい影響するかは、ものによって違います。

広げた紙は、軽くて空気を受ける面が大きいため、空気抵抗の影響が目立ちます。

一方、小さくてずっしりした金属の球なら、重力に比べて空気抵抗が小さく、短い距離では落ち方の差が目立たないことがあります。

ここで大切なのは、空気抵抗そのものの大きさだけでなく、重力に対して、どのくらいの割合になるかです。

同じ大きさ・形の球を同じ速さで動かすなら、空気抵抗はおおむね同程度です。
でも、質量が違えば重力の大きさも違うので、落ち方への影響は同じにはなりません。

そのため、地上で落とした二つの球が、いつでもぴったり同時に着くとは限りません。

 

「ない」と「影響が小さい」は違います

今回、ボクが整理したかったのは、この違いです。

 

考える条件 落ち方の説明
空気抵抗がない場合 同じ場所で、同じ高さから同時に静かに話すと、質量によらず同じ加速度で落ちる
空気抵抗の影響が小さい場合 同時に近い落ち方になることがあるが、差が完全になくなるわけではない
空気抵抗の影響が大きい場合 紙や羽根のように、落ち方の違いがはっきり見えることがある

 

加速度とは、速さがどのくらいの割合で変わるかを表すものです。

「同じ加速度で落ちる」は、落下中ずっと同じ速さという意味ではありません。
落ちながら速くなっていく、その増え方が同じということです。

「空気抵抗を考えない」という条件が付いていたら、実際の空気が消えたわけではなく、その影響を取り除いて考えているのですね。

ボクも、説明を読むときに条件を見落とさないようにしたいと思いました。

 

ピサの斜塔の話は、確かな出来事?

ここでもう一つ、気になったことがあります。

そもそも、ガリレオは本当にピサの斜塔から球を落としたのでしょうか。

ガリレオ博物館の資料では、この話は弟子のヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニによる伝記に記されていますが、実際に行われたかどうかには疑問が残ると説明されています。

つまり、よく知られた逸話でも、確実な出来事として言い切ることはできません。

ボクは、次の二つを分けて受け止めることにしました。

  • ガリレオが、ピサの斜塔でどのような実験をしたのか。

  • 空気抵抗がなければ、質量の違うものはどのように落ちるのか。

歴史上の出来事を確かめることと、自然の法則を実験で確かめること。
それぞれに、根拠を見ていく必要があります。

では、空気抵抗がほとんどない場所で落としたら、どうなるのでしょうか。

その様子を見られる映像があります。

 

 

月面で落とした、ハンマーと羽根

1971年、アポロ15号のデイヴィッド・スコット宇宙飛行士が、月面でハンマーと羽根を落としました。

月面には大気がほとんどなく、空気抵抗の影響をほぼ受けません。

二つをほぼ同じ高さから同時に放すと、ハンマーと羽根は一緒に落ち、ほぼ同時に月面へ着きました。
NASAの記録では、放すタイミングの精度の範囲内で、同じ加速度で落ちたとされています。

 

▼ NASAのページで実験映像を見られます

science.nasa.gov

 

地上なら、羽根はひらひらと落ちるはずです。

ところが、映像の中ではハンマーと一緒に落ちていきます。

親子で見るなら、再生する前に「どちらが先に着くと思う?」と予想してみるのもよさそうです。

なお、月では重力が弱いので、地球よりゆっくり落ちます。
それでも、同じ月面で落としたハンマーと羽根の、速さの増え方は同じです。

 

一つ分かると、また疑問が出てきます

紙を丸めると、先に落ちる。

「空気抵抗が違うから」と分かったつもりになっていたら、今度はガリレオの話が気になりました。

調べてみると、空気抵抗があるかどうかだけでなく、その影響がどのくらい大きいのかを考える必要がありました。

さらに、ピサの斜塔の逸話と、月面に残された実験映像の違いにも気づきました。

本を読んで引っかかった、たった一つの疑問です。
そこから、ずいぶん話が広がりました。

こどもに「でも、これはどうして?」と聞かれたら、ボクもすぐに答えられないことがあると思います。

そんなときは、今回のように、一緒に確かめていけたらいいですね。

 

▼ 答えに迷ったときの、親としての気持ちも書いています

physics-seed.hatenablog.com

 

小さな「なぜ?」を、学びの資産にしたいです。

 

黒豆柴でした🍀

 

参考資料

・NASA「The Apollo 15 Hammer-Feather Drop」